リテンションとは、ビジネスにおいて「保持」を意味し、主に2つの側面があります。
マーケティングにおけるリテンション
既存顧客との関係を維持し、製品やサービスを継続利用してもらうための活動です。例として、ポイント制度、メールマガジン、SNSの活用、リテンション広告などの施策が挙げられます。
経営・人事におけるリテンション
優秀な人材を企業内に定着させ、長期的に働いてもらうための取り組みです。具体的には、働きやすい環境の整備、キャリア支援、待遇改善などが含まれます。
リテンションが重要視される理由は、既存顧客や社内の人材を維持する方が新規獲得よりもコスト効率が高く、企業の成長と競争力の維持に寄与するためです。
この記事では、マーケティングにおけるリテンションについて、具体的な方法や考え方をご紹介します。
リテンションマーケティングを取り入れるべき理由
リテンションマーケティングは、特に人口減少社会や、サブスクリプションモデルの普及により、重要性がより高まっています。顧客との長期的な関係構築を通じて、企業の持続的な成長を支える重要な戦略となっているのです。
ここで、リテンションマーケティングのメリットを紹介します。
コスト効率の高さ
新規顧客獲得に比べて既存顧客へのマーケティングは費用対効果が高いです。
「1:5の法則」によると、新規顧客獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるとされています。限られた予算で効果的なマーケティングを行うためには、リテンションマーケティングが重要です。
顧客生涯価値(LTV)の最大化
既存顧客は長期的に高い価値を提供します。リピート購入やクロスセル、アップセルの機会が増えることで、一人の顧客から得られる総収益を大幅に向上させることができます1。
ブランドロイヤルティの強化
満足した顧客は他社への乗り換えが少なく、ブランドへの愛着が高まります。これにより、競合他社との差別化を図ることができます。
深い顧客理解
継続的な関係構築により、顧客のニーズや嗜好をより深く理解できます。これは効果的なマーケティング戦略の構築に役立ちます。
新規顧客獲得への波及効果
既存顧客のロイヤルティ向上は、口コミ効果を通じて新規顧客の獲得にもつながります。
リテンションマーケティングの具体例
リテンション施策を実施する際に、どんな方法があるかを具体的にご紹介します。
メールマーケティング
顧客の購買履歴や行動に基づいて、パーソナライズされたメールを送信することで、個別のニーズに応えたコミュニケーションが可能です。
また、メルマガの解約率は他のチャネルと比較して低い傾向があるため、顧客に届く可能性が高くなります。さらに、コストが不要であることから、初期フェーズの予算が少ない段階でも始めやすい点がメリットです。
例:
- 誕生日や記念日に特別なクーポンを送る
- 過去に購入した商品に関連する新商品の案内
- 長期間利用していない顧客に再訪を促すメール
ロイヤルティプログラム
継続的な利用や購入に対して、ポイントや特典を付与するプログラムで、顧客のリピート利用を促進します。
例:
- 航空会社のマイレージプログラム
- コーヒーショップのスタンプカード
- ECサイトの会員ランク制度
SNSを活用した情報発信
公式SNSアカウントを通じて、新商品情報、使い方のヒント、お得な情報などを継続的に発信することで、顧客とのタッチポイントを増やします。また、双方向性のため顧客に親しみを感じてもらいやすい施策です。
カスタマーサポートの充実
問い合わせ対応を迅速化したり、チャットボットを導入することで、顧客の疑問や不満を早期に解消し、顧客満足度を向上させます。
リテンション広告
過去に訪問したウェブサイトや閲覧した商品に基づいて、関連する広告を表示し、顧客の再訪問や再購入を促進します。これにより、関心を持った顧客を効果的に呼び戻すことができます。
特別イベントの開催
既存顧客を対象とした特別セールやワークショップなどを開催し、直接的な交流の機会を提供することで、顧客との関係を強化します。
支払い方法の柔軟化
ZOZOTOWNの「ツケ払い」のように、支払いを延長できるサービスを提供し、顧客にとっての購入のハードルを下げることも、リテンションの重要な施策です。
顧客に購入意欲があっても、カートの段階で離脱する場合があるため、より多くの人が利用しやすい仕様を整えておくと効果的です。
リテンションマーケティングの効果測定方法
リテンションマーケティングの効果を測定するためには、いくつかの指標を活用します。主要な指標を説明します。
リテンションレート(顧客維持率)
最も基本的な指標で、顧客がどれだけ継続して利用しているかを測定します。以下の公式で算出されます。
例えば、新規顧客が100人で、そのうち30人が継続利用した場合、リテンションレートは30%です。
顧客生涯価値(LTV)
顧客が企業にもたらす生涯価値を示す指標で、以下の公式で計算します。
ここで、ARPUは「1ユーザーあたりの平均売上」を指し、チャーンレートは「解約率」を表します。この指標は、顧客との長期的な関係がどれほどの利益をもたらすかを評価する際に重要です。
リピート購入率
一定期間内に再購入した顧客の割合を示す指標です。これにより、顧客がどれだけ定期的にリピート購入しているかを把握できます。
顧客ロイヤルティスコア(NPS)
顧客が製品やサービスを他者に推奨する度合いを測定する指標です。NPSスコアは、顧客満足度とリテンションの高さを示す重要な指標です。
その他の重要な指標
チャーンレート(解約率): サービスを解約した顧客の割合を測定します。解約率が高い場合、リテンション施策の見直しが必要です。
顧客満足度:アンケートや調査を通じて顧客の満足度を評価し、リテンションの効果を確認します。
エンゲージメント率: アプリやウェブサイトの利用頻度、訪問回数を測定し、顧客の関与度を示します。
効果測定のポイント
実際に効果測定をするには、次の流れが一般的です。
1. 定期的なモニタリング
これらの指標を定期的に測定し、トレンドを把握することで、施策の効果を継続的に追跡します。
2. セグメント別分析
顧客を年齢や購買履歴などのセグメントに分け、それぞれのグループごとのリテンション施策の効果を分析します。
3. 複数指標の組み合わせ
単一の指標ではなく、リテンションレートやLTV、チャーンレートなど、複数の指標を組み合わせて総合的に評価します。
4. 施策との紐付け
実施したリテンション施策と測定結果を結びつけ、どの施策が効果的であったかを詳細に分析します。
5. 迅速なフィードバック
分析結果を速やかに次の施策に反映させ、リテンション施策の改善を継続的に行います。
効果的なリテンションマーケティングを実現するためには、これらの指標を活用して継続的に効果を測定し、施策を改善し続けることが重要です。
自社に最適なリテンションマーケティング手法を見つけよう
リテンションマーケティングは、顧客を継続させるための重要な戦略です。
自社に最適なリテンションマーケティング手法を見つけるためにも、ぜひこの記事を参考に顧客とのコミュニケーションを大切にし、柔軟に対応しましょう。