消費者の購買行動の多様化により、一つのチャネルだけで完結することは少なくなってきています。このような変化に対応できるためのマーケティング手法として、クロスチャネル、オムニチャネルが注目されています。
そこでこの記事では、クロスチャネルの基本的な概要と導入するメリット、そしてオムニチャネルの違いを解説します。
クロスチャネルとは?
クロスチャネルとは、実店舗、ECサイト、モバイルアプリ、メール、SNSといった複数の顧客の接点(チャネル)を連携させ、これらのデータを一元管理する仕組みのことです。
クロスチャネル化が注目されている背景としては、インターネットとインターネットの普及により、消費者の購入行動は複雑化しました。情報の入手元が広告だけでなく、SNSやレビューサイトにも広がり、企業はこれらの多様なチャネルで一貫した体験を提供する必要があります。
クロスチャネルを導入する3つのメリット
顧客情報の一元管理による深い顧客理解
チャネルごとに顧客情報を分断して管理していると、同じ顧客でもシステム上では異なるデータとして扱われることがあります。クロスチャネル化では、異なるチャネルでの顧客の行動履歴や購入履歴をまとめ、「顧客ごとの統合的データ」として管理することで、よりパーソナライズされた対応が可能になります。
例えば、顧客が店舗で商品1を購入し、ECサイトで商品2を購入した場合、その履歴が一つの顧客データとしてまとめられるため、再訪店時に効果的なプロモーションを提供できるのです。
在庫の最適化とサービス向上
クロスチャネルでは、在庫情報も連携できます。
例えば、店舗で在庫切れの商品を顧客が探しているとき、スタッフがECサイトの在庫を確認し、その場でオンライン注文することができるなどです。
顧客体験の向上と利便性の提供
クロスチャネル化により、顧客は自分の都合に合わせて自由にチャネルを利用できるようになります。 同様に、ECサイトで購入した商品を近くの店舗で受け取ったり、アプリから予約した商品の受け取り日時の変更など、お客様の利便性を最大限に高めることができます。
オムニチャネルとの違い
クロスチャネルは、顧客が商品・サービスに接触する全てのチャネルを統合し、一貫した情報と体験を提供するのに対し、オムニチャネルは、クロスチャネルのさらにデータ連携を進めたもので、全てのチャネルが連携し、一貫した顧客体験を提供するという手法です。
下記表で違いをまとめましたので、企業の規模や目的に応じて、クロスチャネルかオムニチャネルを選びましょう。
クロスチャネル | オムニチャネル | |
---|---|---|
目的 | 異なるチャネルを連携し、顧客が便利に使えるようにする | どのチャネルでも同じ一貫した体験を提供する |
顧客体験 | チャネルを跨いでも情報が引き継がれる(例:EC注文→店舗受け取り) | 全てのチャネルで同じサービスやキャンペーンが利用可能 |
運用方法 | 各チャネルの強みを活かした組み合わせが可能 | すべてのチャネルを統一し、完全に一体化した体験を重視 |
導入の難易度 | 比較的導入が簡単でコストも低い | 完全統合が必要でクロスチャネルと比較して、高コスト・高難易度 |
活用例 | SNSでクーポン配布→店舗で利用 | 店舗・ECサイト・アプリで共通のクーポン提供 |
クロスチャネル導入の際の注意点
クロスチャネルを効果的に導入するためには、以下の3つの重要なポイントに留意することが必要です。これにより、各チャネルを連携させ、顧客に最適な体験を提供できるようになります。
全社横断的なデータ統合・共有
全社横断的なデータ統合・共有を行いましょう。
なぜなら、各チャネルごとに一時的に扱われたデータ(顧客情報、在庫データなど)が分断されていると、一貫性のある顧客対応ができないからです。
手法としては、以下を活用することが一般的です。
・CRMやDMPなどのデータ管理プラットフォームを導入し、各チャネルのデータを一元管理する
・ERPシステムを使って在庫情報を統合し、当面で全店舗やECの在庫状況を把握できる体制を構築する
・部門横断的なデータ共有体制を作り、マーケティング、営業、サポート部門が連携できる体制を整える
ペルソナ作成とカスタマージャーニーの設計
ペルソナ(顧客像)を明確に設定しましょう。
なぜなら、顧客の行動パターンやニーズが理解できなければ、効果的な意見を打ち出すことができないからです。まず、顧客の年齢、性別、趣味などを明確化します。次に、利用するチャネルやどのような情報を求めているのか具体化させます。
また、顧客がどのような経路をたどって購入に至るのかを、明確化することも重要です。どのフェーズでどのチャネルを使うべきかが明確になり、適切な施策を考案できるようになります。
データ収集と分析の重要性
各チャネルから収集したデータを正しく活用しましょう。
GA4(Googleアナリティクス4)などのツールを使い、各チャネルでの顧客行動を分析します。これにより、どのチャネルでどんな行動をとったのかが明確になるので、効果的なアプローチが可能になります。
さいごに
クロスチャネルを活用することで、顧客はいつでも便利なチャネルを選択し、企業はパーソナライズされたサービスで満足度を高めることができます。
複数のチャネルを集中して連携させる取り組みは、企業の成長やブランド価値向上にもつながります。データ分析やMAツールの活用に注力し、クロスチャネルを導入しましょう。